無限について1


私は無限感の漂う作品が好きだ。


描いたものと描いていない空間が絡み合って、
余白の力が漲る唐宋代の山水画や、
わずかに遺った絵画の破片とその周りを埋めた
広大な漆喰との鬩ぎ合いを見せる古代ローマ
壁画群など、そこには作者を遙かに食み出た、
大きな何かがある。


長い風雨と共にある山中の自然岩に刻まれた磨崖仏、
辺りの空間と浸食し合う手足が破損欠落した
ベルヴェデーレの胴体彫刻など、私はそのような
外界との関係によって成り立つ作品に、
尽きない無限の呼吸を感ずる。


李禹煥『余白の芸術』より抜粋)