大田黒元雄の「写真芸術」
モノクロームの絵を活かすのに最も大切なのが
光と影との対照並びに諧調なのは言ふ迄もない。
事実、写真は光と影の芸術だ。
それに次いで必要なのは構想と構図に対する考へを
発達させることだらう。けれど此れは前に述べた光に
対する問題と違って、美術上の教養さえ積めば自然に
発達するものだ。
平凡のうちに非凡を発見する事、此れは総べての芸術家の
常に忘れるべからざる事であると同時に、また特に写真家に
対して肝要な事だ。我々に欠けて居るのは眼なのだ。
私は総べての写真家が所謂技巧を超越しようと努めることを
希望する。
大田黒元雄「写真小論」より
(光田由里「運動体としての写真芸術社」より抜粋
『芸術写真の精華 日本のピクトリアリズム 珠玉の名品展』記載)