額縁―ひとつの美学的試み3

(『ジンメル・コレクション』「額縁―ひとつの美学的試み」より抜粋)
 
 額縁の装飾全体を構成する決め手になっているのは、
流動と自己隔離の印象であり、これによって、絵画が
あらゆる周縁的なものから絶縁されていることが強調される。
したがって分断のために用いられる一本一本の線は、
この印象を最大限に高めることができるかどうかによって、
正当なものかどうかが決まってくる。


 昔からよく用いられてきた手法に、より小さな絵にはより広い、
あるいはよりダイナミックな印象を与える額縁をつけるという
やり方がある。これなども同じ理由から説明できる。
小さな絵は、絵と同時に目に入ってくる周辺環境のなかに
埋没してしまう危険があり、それに拮抗して十分に自立的な
自己主張ができなくなる可能性がある。
したがって、この危険に対処するためには、大きな絵の場合よりも
強力な分離手段が必要となる。これにたいして大きな絵は、視野の
大部分を自分だけで占有することができるため、自分の印象の
自立的な意義をおびやかす競争相手を恐れる必要がない。
そこで大きな絵は最小限の額縁で満足できるのだ。