額縁―ひとつの美学的試み2


(『ジンメル・コレクション』「額縁―ひとつの美学的試み」より抜粋)


 あらゆる心的現象において、ある存在が私たちにたいして距離を
保っているということは、その存在がそれ自身のうちで統一を
保っているということだ。なぜなら、ある存在が自己完結していれば
いるほど、その存在は、だれにも侵入されない領域をより多く保有し、
他のだれにたいしても自分を閉ざすことができる、自分だけの世界を
より多く保有することになるからだ。


 額縁の特性は、絵画のこうした内的統一を補強し、
感覚化するところにある。それは、額縁の四隅に斜めに走っている
継ぎ目のような一見偶然的なものからすでに始まっている。
この継ぎ目に沿って視線は絵の内側へと滑りこむ。視覚はこれらの
継ぎ目を、観念上の交点に向かって延長し、それによって絵画と
その中心との関係が、四つの側面から強調される。
さらに、額縁の外側部分を内側部分よりも高くせりあがらせれば、
四つの側面は中央に収束するように感じられ、額縁の継ぎ目が
果たす統合作用は目に見えて強化される。