覚書・美の余韻


【余韻 よ-いん】
1 音の鳴り終わったのちに、かすかに残る響き。
  また、音が消えたのちも、なお耳に残る響き。
余音。「鐘の音の―が耳もとを去らない」
2 事が終わったあとも残る風情や味わい。「感動の―にひたる」
3 詩文などで言葉に表されていない趣。余情。「―のある作品」


余韻は知覚上に「あらわれたもの」が消えていくモーメントに
感じられるものである。
明確に現出していた実体(リアリティ)がその具体性を失い、
時間と空間全体の中へと還元されていく、あるいは「空白」の
さなかに「微かなもの」ないし「はかないもの」として残る現象である。


その微妙なプロセスは「微かなもの」への感性によって実感しうる。
それは感覚としての「肌理細やかさ」であり、
情緒としての「奥ゆかしさ」であり、理性としての「吟味」である。


きわめて美しいもの、真実を宿して美しく存在するものには、
それ自体から離れた後も美を感じ続けることのできる、深い余韻がある。
取り繕われた美的なもの、虚飾、美しさを誇張したものには、
一時的な快感や、過剰な楽しさ、刺激的な「興奮」をもたらすが、
内的な静けさの中で響き続ける美しい余韻はない。