ゲオルグ・ジンメルの一文

文化が発展すると、仕事はますます特殊化し、一面化し、
担当分野にますます狭く限定されるようになる。
ところが、こうした生産の細分化に対応して消費が
細分化されることはけっしてない。むしろ逆だ。
現代人は、あたかも、分業によって仕事が一面的で
単調になってしまったことを、受容と享受の面で
埋め合わせしようとしているように見える。
受容と享受の分野では、多種多様な印象が押し合いへし合い、
ますます混雑の度合いを加え、ますます速いピッチで、
ますます色とりどりに、ひとつの興奮が新しい興奮にとってかわる。


(『ジンメル・コレクション』より抜粋)


この一文は、1898年に書かれた「ドイツ見本市」
というエッセーにあるのだが、100年以上も前の文章とは思えない。
現在の大衆社会が、いまだにこの問題を乗り越えていないように
思えるのは、私だけだろうか。