書物とともに

書物からまったく離れて生きるのはむずかしいことです。
百年ばかり昔、アンドレ・ジッドは自分にむかって
「すべての書物を捨てるべし」と命じながら、
パリからアフリカへ旅立ちました。
旅の荷は軽くなかったようです。
ひそかに書物をたずさえていたからでした。
ジッドのように意地を張らず、書物とともに世界を旅して、
いらなくなったら捨てていけばいいのではないでしょうか。

(講談社選書メチエ刊行の辞より)